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ナフサ不足が建設資材に与える影響

木材と道具を扱う職人の手元

公開: 2026-10-08 / 更新: 2026-10-08 ・ 読了 約5分

この記事の要点

  • ナフサ不足により塩ビ管や断熱材等の建材価格が10〜30%前後上昇する
  • 通常より納期が1〜2ヶ月延びるリスクを見込み発注を前倒しする必要がある
  • スライド条項の事前締結とメーカー改定通知の提示が価格転嫁の条件となる

ナフサ不足が建設資材に及ぼす直接的な影響

粗製ガソリンであるナフサの供給不足や価格高騰は、塩化ビニル管やプラスチック系断熱材、塗料、接着剤など石油化学由来の建設資材全般において10%〜30%前後の価格上昇と納期遅延を招きます。基礎原料であるエチレンやプロピレンの生産量が落ち込むことで、建材メーカー各社は製品価格への転嫁や減産対応を余儀なくされ、工事現場の予算超過や工期遅延に直結します。

ナフサは原油から精製される基礎化学原料であり、建設現場で用いられる合成樹脂製品の大半がこのナフサを起点に製造されています。地政学的リスクによる原油調達環境の変動や、海外プラントの稼働トラブル、脱炭素化に伴う製油所の再編が進むと、ナフサの市場供給量は急激に逼迫します。国内の石油化学コンビナートでの稼働率が低下すると、一次誘導品であるエチレンの生産量が数パーセント減少しただけでも、サプライチェーンの末端に位置する建材流通市場では深刻な品薄が発生します。

影響は単なる仕入れ価格の改定にとどまりません。メーカー側が原材料不足により受注制限を敷くケースがあり、通常は発注から2週間程度で納品されていたパイプ類や断熱パネルが、納品まで1ヶ月から2ヶ月以上要する事態に発展することもあります。これにより、工程調整がつかずに現場が一時稼働停止に追い込まれるリスクが顕在化しています。

影響を受けやすい主な建設資材と価格動向

塩化ビニル管・継手(パイプ類)

設備配管や下水配管に不可欠な塩化ビニル樹脂(PVC)は、ナフサ由来のエチレンを主原料の約43%に使用しています。ナフサ価格が高騰すると、塩ビ管の仕入れ値は直近相場から15%〜25%程度の幅で急騰することが一般的です。特に大型造成地や高層建築で使用される大口径の配管資材は流通在庫が少なく、供給制約の影響を真っ先に受ける傾向があります。

発泡プラスチック系断熱材(EPS・XPS・ウレタン)

建築物の省エネ化に伴い需要が高まるビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)や押出法ポリスチレンフォーム(XPS)、硬質ウレタンフォームは、原料のほぼ100%が石油化学由来です。原油・ナフサの調達難は、これらの平米単価に対して直接的に数百円規模の押し上げ圧力となります。外皮性能の基準強化が進むなか、断熱材の調達難は住宅・非住宅を問わず工期に致命的な遅延をもたらします。

塗料・接着剤・防水用ルーフィング材

外壁仕上げ塗料、内装用接着剤、ウレタン防水材などもナフサ誘導品である溶剤や樹脂エマルションに依存しています。これらの資材は原油高とナフサ不足の影響を受け、半年から1年のスパンで5%〜15%程度段階的に値上げされるパターンが目立ちます。副資材としての位置づけになりがちですが、建築一式工事における総額を確実に押し上げる要因となります。

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木材を測って作業の準備をする手元 /イメージ画像

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原材料不足に直面した際の調達手順と失敗例

早期のサプライチェーン把握と分散発注の手順

資材の調達遅延を防ぐためには、基本設計や積算の初期段階から原料供給の動向を把握することが重要です。

まず、現場で使用する資材リストを「原油・ナフサ依存度」で分類します。次に、依存度の高い特定資材について、1次卸業者だけでなく複数の流通ルートに対して在庫状況を早期に確認します。発注から納品までのリードタイムは従来の1.5倍から2倍程度を見込み、前倒しで正式発注を行う体制を整えます。同時に、同一仕様で他メーカーの代替製品が利用可能か、設計担当者や施主と事前に協議を済ませておくことが有効です。

経済環境全体の需給動向や支援施策の枠組みについては、経済産業省の発表資料などを定期的に確認し、マクロな動向に合わせた調達計画を立てることが求められます。

現場で発生しやすい代表的な調達の失敗例

ナフサ不足の局面で頻発する失敗として、従来通りのリードタイムで直前に発注をかけて現場納品が間に合わなくなるケースが挙げられます。以前は発注から5営業日で現場搬入できていた断熱材が、メーカーの原料調達停滞により納品まで30日以上かかり、大工工事が長期間ストップして工程全体が狂ってしまう事態です。

また、価格高騰を見越して未確定の段階で過剰な資材を仮押さえした結果、製品の保管場所を圧迫し、保管費用や荷崩れによる破損リスクを招いて損失を出すケースもあります。さらに、価格改定のタイミングを把握しきれず、旧単価で見積書を提出・契約してしまい、仕入れ値の上昇分をすべて施工業者が被ることになる失敗も後を絶ちません。

請負代金への価格転嫁と契約実務のポイント

スライド条項の適切な活用

民間工事・公共工事を問わず、急激な資材価格の変動に備えて工事請負契約書に「スライド条項(単品スライド条項やインフレスライド条項)」を明確に盛り込んでおくことが不可欠です。契約締結時から工期中の資材価格が一定水準を超えて上昇した場合、発注者に対して請負金額の変更を協議できる条項を明文化しておかなければ、ナフサ不足に伴う資材高騰リスクを施工側単独で吸収することは困難になります。

施主・発注者への根拠資料提示と説明責任

単に「資材が高くなった」と口頭で伝えるだけでは、施主や元請けからの増額合意を得ることはできません。建材メーカーが発行した価格改定通知書の写しや、公的な物価指数データ、直近の仕入れ伝票などを客観的な証拠として提示することが重要です。原材料であるナフサの取引相場から製品価格へ反映されるまでのタイムラグを論理的に説明し、おおよそどの程度のコスト増が発生しているかを明示します。

下請取引における適正な価格転嫁や取引条件の改善に関しては、中小企業庁が策定しているガイドラインに準拠した交渉姿勢を取ることで、法的なトラブルを未然に防ぎながら円滑な協議を進めることが可能です。

今後の見通しと建設事業者が取るべき中長期対策

世界のエネルギー需要の変化や石油化学産業の構造転換を背景に、ナフサの需給バランスは今後も断続的な変動が続く見通しです。一時的な不足の解消に期待するだけでなく、中長期的な調達戦略の見直しが求められています。

具体的には、石油化学由来の断熱材から木質繊維系やグラスウールなどの無機質断熱材への仕様変更を設計段階から提案できる体制を構築することや、再生プラスチックを活用した環境配慮型建材の採用ルートを開拓することが挙げられます。1つの資材やメーカーに固執せず、複数の代替案を常に手元に持っておくリスクヘッジの姿勢が、今後の建設事業経営において工事の安定継続と利益確保を分ける重要な分水嶺となります。

よくある質問

Q. ナフサ不足によって最も納期遅延が起きやすい建設資材は何ですか?
A. 塩化ビニル管・継手や、ポリスチレンフォーム(EPS・XPS)などの発泡プラスチック系断熱材です。これらは主原料の多くを石油化学製品に依存しているため、ナフサの供給制約が生産量低下に直結しやすく、納期が通常の2倍以上延びる場合があります。
Q. 資材価格が高騰した際、施主への価格転嫁をスムーズに行う方法はありますか?
A. 契約書にあらかじめスライド条項を明記しておくことが基本です。その上で、建材メーカーの公式な価格改定通知書や仕入れ伝票などの客観的な書類を根拠として提示し、コスト上昇分を明確にして協議を進めることが重要です。
Q. ナフサ不足による資材調達難を回避する代替策にはどのようなものがありますか?
A. 石油化学由来の資材に依存しない代替品への設計変更が有効です。例えば、断熱材であればグラスウールやロックウールなどの無機繊維系資材への切り替えや、同等性能を持つ他社製品をあらかじめ複数選定しておく方法があります。
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